外国人技能実習生の雇用保険・健康保険はどうなる?保険のあれこれ

安心して働く上で、労働保険(労災保険・雇用保険)社会保険(健康保険・厚生年金)は欠かせない制度です。外国人技能実習生についても、これらの保険は適用されるのでしょうか。今回は雇用保険や健康保険などの公的保険と、外国人技能実習生向けの民間保険についてご紹介します。

労災保険(労働者災害補償保険)

労災保険は、業務災害や通勤災害に対して、労働者本人やその遺族のために必要な給付などを行うことを目的とした、国が運営する保険制度です。労働者を雇用するすべての事業所に適用されます。入国直後の座学講習を修了した技能実習生は、労働基準法上の労働者に該当し、労災保険の対象になります。

労災保険料はすべての労働者に支払う賃金総額に労災保険料率を乗じた額であり、事業主の全額負担です。雇用保険料と併せて「労働保険料」として徴収されます。一定規模以上の事業については、事業場の労働災害の多寡に応じて労災保険料率を増減させる「メリット制」が適用されます。

雇用保険

雇用保険は、労働者が失業した場合に生活の安定と就職の促進のために失業給付などを行う、国が運営する保険制度です。農林水産事業の一部を除き、労働者を雇用する事業所は雇用保険の適用事業所になります。

雇用保険料は労働者と事業主の双方が負担し、その負担割合は毎年変更されます。技能実習生に対する給付件数は少ないものの、実習実施機関の事業閉鎖後、他の実習実施機関に移るまでの間に失業給付を行った事例があります。

国民健康保険

国民健康保険は、病気やけが、出産、死亡などに関して必要な給付を行う、強制適用の医療制度です。市区町村が運営する場合と、同種の事業や業務に従事する者で組織される「国民健康保険組合」が運営する場合の2種類があります。

技能実習生は、入国直後の講習期間中は市区町村の「国民健康保険」に加入し、実習実施機関が健康保険適用事業所の場合、講習修了後に「健康保険」に加入します。保険料は技能実習生(世帯主)が負担し、負担額は市区町村や国民健康保険組合によって異なります。

健康保険

健康保険は、病気やけが、出産、死亡などに関して必要な給付を行う、強制適用の医療制度です。企業の労働者を主な対象としており、全国健康保険協会が運営する「協会けんぽ」と健康保険組合が運営する「組合健保」の2種類があります。健康保険に加入しない場合は、国民健康保険に加入しなければなりません。

技能実習期間中、健康保険料は毎月徴収されます。毎月の健康保険料(標準報酬月額に保険料率を乗じた額)は、技能実習生と事業主が折半します。

国民年金と厚生年金

国民年金は、老齢や障害、死亡に際し、必要な給付を行う制度です。日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が対象であり、20歳以上の技能実習生も例外ではありません。平成28年度の国民年金の保険料は月額16,260円です。

入国直後の講習期間中は国民年金の第1号被保険者、実習実施機関が厚生年金の適用事業所の場合、講習修了後は厚生年金の被保険者となります。厚生年金加入者は国民年金の第2号被保険者に分類され、国民年金の給付である基礎年金と併せて厚生年金を受給可能です。

厚生年金の毎月の保険料(標準報酬月額に保険料率を乗じた額)は、技能実習生と事業主が折半します。技能実習生など短期滞在する外国人は、「厚生年金保険料を6ヶ月以上納付している」「日本に住所を有していない」「出国から2年以内」などの条件を満たせば、「脱退一時金」を請求可能です。国民年金についても同様の脱退一時金があります。

外国人技能実習生総合保険

外国人技能実習生総合保険は、法務省の「技能実習生の入国・在国管理に関する指針」を受け、公的保険を補完する目的で設けられた民間の傷害保険です。技能実習期間はもちろん、技能実習生の出国から帰国までの全期間をカバーします。

公益財団法人国際研修協力機構(JITCO)が保険窓口となり、保険料は割安です。外国人技能実習生総合保険の上乗せ保険として、「団体総合生活補償保険」も用意されています。

おわりに

労働保険や社会保険は、日本人であっても分かりづらいものです。技能実習生は日本語能力の問題もあり、自分で調べて理解することは難しいでしょう。技能実習生に説明したり、質問を受けたときに答えられたりできるよう、保険制度について十分に理解しておきましょう。 

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