技能実習生の数は年々増加し、平成27年末には192,655人に達しました。
日本の優れた技能や技術を学ぼうとする技能実習生の増加は好ましいことですが、外国人技能実習生の失踪者数増加も看過できない問題です。
平成28年3月11日の法務省発表によると、失踪した技能実習生の数は平成28年1月1日現在で5,904人となり、過去最多を記録しています。
今回は実習生が受入れ先企業から失踪・逃亡することを未然に防ぐ方法についてご紹介します。
健康で意欲のある人材を選抜する
技能実習生は、在留資格認定証明書交付申請時に復職予定証明書(母国の派遣元企業によって作成され、 帰国後は復職予定であることを証明する書類)を提出します。
復職予定証明書の提出が求められる理由は、母国で従事した職種の技術や技能を日本でさらに高め、 技能実習修了後は修得した技術や技能を母国で発揮することが期待されているためです。
しかし、最近では身につけたスキルを生かした職業に就かないケースが見られます。
「技能実習候補生に対する日本語教育を徹底している」「職種で必要とされる専門用語や日本のマナーを候補生に身につけさせている」など、 候補生の育成に熱心な送り出し機関もありますが、健康面や仕事に対する姿勢は、直接本人と会って話をしなければ分からないものです。
受入れ企業は、技能実習生の選抜に積極的に関わることが大切です。
受入れ前に現地の派遣元企業を訪問し、就業状況の確認及び面談を行いましょう。
日本の貨幣価値は海外と比較して高く、出稼ぎ目的で日本を訪れる外国人もいます。
技能実習生を迎え入れる際は、本人及びその家族に技能実習制度の趣旨を理解してもらうことが重要です。
技能実習制度は、修得した技術・技能を帰国後に母国で生かすことを前提としています。
そのため、「稼ぐために日本に来たい」という人材は技能実習生の目的に合いません。
たとえスキルが優れていたとしても、このような人材は給料の良い働き口を求めて、失踪してしまう可能性があります。
日本の文化やルールを理解させる
実習生は来日前に送り出し機関で日本について学習していますが、 頭に思い浮かべていた日本での生活と実際の生活には、ギャップが生じていることがあります。
受入れ先企業はこのギャップを少しずつ埋めていくよう努めてください。
日本の文化や休日の過ごし方を知ってもらうため、休日に技能実習生と一緒に日本の行事を楽しむことも良いでしょう。
また、買い物の仕方やゴミの出し方、自転車の乗り方、公共交通機関の利用方法など、 日本に長く住んでいる人からすれば当たり前のルールであっても、来日して日の浅い技能実習生は戸惑ってしまいます。
特に、安全面には細心の注意を払いましょう。
職場まで自転車通勤する技能実習生も多いため、指定した安全な通勤経路の利用を推奨するようにしてください。
技能実習生を温かくサポートする
「日本語が思うように話せない」「技能実習に一生懸命取り組んでいるにもかかわらず、 なかなか技能が上達しない」「家族と長期間会えなくて寂しい」など、ストレスを感じる技能実習生もいます。
技能実習生は悩みを相談できる人が限られるため、周囲の温かいサポートが欠かせません。
特に、受入れ先企業の研修指導員が果たす役割は重要です。
技能実習生の体調管理に気を配ったり、不安やトラブルを抱えていないか注意を払ったりすることが求められます。
おわりに
異国からやって来た技能実習生には、さまざまな誘惑があります。
受入れ側が「指示通りに仕事さえしてもらえれば、後はどうでも良い」という考え方では、技能実習生の失踪につながりかねません。
受入れ後は日本の文化やルールをきちんと理解させ、研修指導員を中心として周囲が温かくサポートすることが重要です。