外国人雇用に関する助成金・補助金

厚生労働省の「外国人雇用状況の届出状況」によると、日本における外国人労働者数は平成20年には486,398人でしたが、平成27年には907,896人に増えています。このうち、技能実習生として日本で就業する外国人も少なくありません。法務省の「出入国管理統計」によると、平成27年に新規入国した外国人のうち、在留資格「技能実習1号ロ」で入国した者は90,307人と、就労が認められる在留資格者の51.6%を占めます。
このように外国人が日本で働くことは増えており、外国人の雇用を検討されている方も多いのではないでしょうか。厚生労働省は、雇用に関係した各種助成金・補助金を設けています。これらは外国人雇用のみを対象としたものではありませんが、日本人、外国人の区別なく利用することが可能です。今回は外国人を雇用する際に役立つ雇用調整助成金とトライアル雇用奨励金をご紹介します。

雇用調整助成金

雇用調整助成金は、経営不振で事業活動の縮小を余儀なくされた企業が、一時的な休業や教育訓練、出向により雇用維持を図る場合に、休業手当や賃金などの一部が助成される制度です。教育訓練を実施した場合には、教育訓練費が助成金にプラスされます。

支給対象となる労働者

・同一事業主において雇用保険の加入期間が6ヶ月以上の労働者

主な支給要件

・最近3ヶ月の生産量や売上高などが前年同期比で10%以上減少している
・雇用保険被保険者数と派遣労働者数の最近3ヶ月の月平均値の雇用指標が、前年同期比で大企業は5%を超えてかつ6人以上、中小企業は10%を超えてかつ4人以上増加していない

支給額

休業を実施した場合の休業手当または教育訓練を実施した場合の賃金相当額、出向を行った場合の出向元事業主の負担額に対して、大企業の場合は1/2、中小企業の場合は2/3が助成されます。労働者1人1日当たりの助成金額の上限は、平成28年8月1日に7,810円から7,775円に変更されました。
教育訓練を実施した場合の支給額は、対象者1日1人当たり1,200円です。休業・教育訓練の場合は1年間で最大100日分、3年間で150日分、出向の場合は最長1年間の出向期間中受給可能です。

雇用調整助成金の活用法

通常であれば雇用調整せざるを得ない状況であっても、雇用調整助成金を活用することにより、日本語教育や職業訓練の期間に充てることができます。
特に外国人が日本語でコミュニケーションを取る職場では、日本語の運用能力は業務遂行に大きな影響を及ぼします。業績不振時は助成金で日本語講師を呼び、日本語スキルを高めるという使い方も可能です。

ただし、技能実習制度は技能移転を通じた開発途上国などへの国際協力を目的としており、雇用調整助成金を受給している事業主が技能実習生を休業させるときは、事前に監理団体へ相談する必要があります。

トライアル雇用奨励金

経験や知識、スキル不足などにより就職困難な求職者を原則3ヶ月雇用し、適性や能力を見極めた上で常用雇用(正社員)に移行するか判断できる制度です。

支給対象となる主な求職者

以下のいずれかの条件を満たす求職者は、トライアル雇用奨励金の対象者になります。

・紹介日時点で、就労経験のない職業に就くことを希望する
・紹介日時点で、学校卒業後3年以内で、卒業後に安定した職業に就いていない
・紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
・紹介日の前日時点で、離職期間が1年を超えている

支給額

対象者1人当たり、月額最大4万円(最長3ヶ月)

トライアル雇用奨励金の活用法

優秀な外国人であっても、職場になじめなければ能力を最大限発揮することはできません。トライアル雇用奨励金を利用することにより、トライアル雇用期間に職場への適応を確認できます。

おわりに

「外国人を雇用したいが好不況の波が大きく、任せられる仕事を常に用意できるか不安だ」という場合も、雇用調整助成金を利用することにより、閑散期は雇用を維持しつつ、社員のスキルアップを図ることができます。また、適性を見極めた上で正社員として雇用したい場合は、トライアル雇用奨励金の活用もあります。
外国人は職場の活性化や将来の海外展開に欠かせません。助成金を活用した外国人の雇用を検討されてはいかがでしょうか。

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