外国人技能実習制度は、日本の優れた技能・技術・知識を外国人技能実習生に習得させ、母国の経済発展を担う人材育成などを目的としています。 実習生受入先にとっては、国際貢献及び良い働き手の確保のために欠かせない制度です。
しかし、現行の外国人技能実習制度における受入期間は3年であり、日本にやってきた実習生は仕事に慣れたタイミングで帰国しなければなりません。 そこで議論されるようになったのが、実習生の受入期間延長です。今回は外国人技能実習制度改正による、実習生の受入期間延長についてご紹介します。
外国人技能実習生の受入期間延長
技能実習の受入方式には、企業単独型と団体監理型の2つがあります。
「企業単独型」は日本企業などの実習実施機関が海外の現地法人や合弁企業、取引先企業の職員を受入れて技能実習を実施する方式、 「団体監理型」は商工会や中小企業団体などの営利を目的としない団体が実習生を受入れる方式です。
現行の技能実習制度における受入期間は3年です。実習生は1年目「技能実習1号」、2~3年目「技能実習2号」の在留資格を得て在留します。
金業単独型の場合の在留資格は、1年目「技能実習1号イ」、2~3年目「技能実習2号イ」です。一方、団体監理型の場合は1年目「技能実習1号ロ」、2~3年目「技能実習2号ロ」となります。
なお、技能実習2号に移行するためには、技能実習1号終了後に「技能検定基礎2級」などに合格することが必要です。
今回、法務省と厚生労働省が共同で提出した「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」には、 優良な実習実施者・監理団体による4~5年目の技能実習(第3号技能実習生の受入)を可能とすることが盛り込まれました。
優秀で意欲のある技能実習修了者に対して、よりレベルの高い技能を習得させることを狙いとしています。
同法案は189回国会に提出されたものの、成立には至りませんでした。
190回国会で継続審議が決まり、次期国会に持ち越されることになっています(2016年7月1日現在)。
そのため、第3号技能実習生の詳細は明らかになっていませんが、受入期間延長の可能性を心に留めておきましょう。
外国人建設就労者受入事業の開始
外国人技能実習生受入事業とは別に、技能実習を終えた実習生が2年間延長して日本に滞在することが可能となる制度があります。 それが、国土交通省の「外国人建設就労者受入事業」です。
この制度は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に伴う建設需要の高まりに対応するための緊急かつ一時的な措置として、 2015年4月より開始されています。
外国人建設就労者受入事業は、24職種36作業を対象として、建設分野の技能実習修了者が実習後に引き続き日本に在留したり、 帰国後に再入国したりすることを可能にする制度です。
監理団体や受入企業が事前に国土交通大臣の認定を受けることで、 技能実習修了者は「特定活動」の在留資格で2年間(帰国して1年以上経過した場合は3年間)在留できます。
制度活用で即戦力となる人材を確保できる他、建設需要に応じて、受入企業の常勤職員の数まで外国人材を受入れることが可能です。 なお、外国人建設就労者が従事する現場は、オリンピック・パラリンピックに関連する工事現場でなくとも構いません。
おわりに
技能実習を終えた実習生の中には、日本に残りたいという実習生も少なくありません。
技能実習生受入事業の延長はまだ実現していませんが、将来的には延長する可能性もあります。
制度の改正が決まりそうになったら、優秀で意欲がある実習生に対し技能実習の延長が認められた場合はどうするつもりなのか 、あらかじめ意思確認することをおすすめします。